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新型ノロウイルス感染症の症状とは?(潜伏期間や初期症状など)

新型ノロウイルスの感染者は、乳幼児から高齢者まで幅広い年齢層にわたっています。
ノロウイルスによって実際に死に至ることはありませんが、「死を覚悟した」「死ぬほどの苦しみを味わった」と語る患者さんが多い病気でもあります。

新型ノロウイルスに感染した場合、数時間から数日(平均1-2日)で以下のような症状が現れます。

[激しい吐き気、嘔吐]

吐き気や嘔吐が一日数回から、ひどい時は十回以上起こります。
嘔吐の数時間前に胃もたれや胃部の膨張感がみられることもありますが、ほとんどの場合が突発的な吐き気・嘔吐に襲われます。嘔吐物を喉につめて窒息するケースもあるので十分に注意しましょう。

[激しい腹痛、下痢]

激しく頻繁な下痢症状が現れますが、便に血液が混じるようなことはありません。

[悪寒]

発熱に伴う悪寒(寒気)もノロウイルス感染の症状のひとつです。

[発熱(38℃程度)]

ノロウイルスに感染した場合の発熱は38℃程度と、あまり高熱にならないのが特徴です。

この他、ノロウイルス感染症は、まれにではありますが、十二指腸潰瘍を併発することがあります。

ノロウイルス感染によるこれらの症状は、2〜3日程度で自然に治まり、後遺症が残ることもありません。
死亡事例としても、喉に嘔吐物を詰まらせたことによる窒息例など数例あるのみです。

ノロウイルスに感染しても症状が現れないまま終わるケースや、嘔吐や下痢などの症状が出ず、ただの風邪だと認識されるケースもあります。

しかし、こうした大きな症状が認められない場合でも、他人への感染力はあるため、ノロウイルス感染の拡大防止のために細心の注意を払うことが必要となります。
感染者の症状が治まった後も、ノロウイルスは1〜3週間かけて感染者の便から排出され続けるからです。

新型ノロウイルスの特徴-旧型ノロウイルスとの違いは?

新型ノロウィルスと旧型ノロウィルス

非細菌性急性胃腸炎の原因となるウイルスの一種であるノロウイルス。
2012年末には2006年に大流行したウイルスから変異した「新型ノロウイルス」が確認されました。

ノロウイルスの特徴としては、感染力が強いこと、わずかな量のウイルスでも感染すること、感染から発病までの期間(潜伏期間)が10数時間から数日と短いことなどが挙げられます。

ノロウイルスは、遺伝子の違いによって40種類以上に分類されており、変異する場合があります。

2006年に流行したノロウイルスは「G24(G㈼/4)」と呼ばれるタイプのウイルスでしたが、(G㈼/4)型ノロウイルスには、他のノロウイルスに比べて変異しやすいという特徴があり、現在も毎年のように変異を繰り返しています。また、他のノロウイルスよりも感染力が強いこともその特徴の一つです。

2012年の10月以降に全国で大流行したのはこの変異株となる新型ノロウイルスで、変異によってウイルス粒子の表面の腸管細胞に付着する部分が変化し、消化器官に付着しやすくなったことが、新型ノロウイルスの大流行を引き起こしたと考えられています。

日本で新型ノロウイルスが最初に見つかったのは2012年1月で、北海道と大阪で確認されました。

ちなみに、新型ノロウイルスが世界で最初に発見されたのはオーストラリアで、「シドニー2012」と名づけられています。

その後、世界中でも流行し、例えばイギリスでは、例年のペースを60%以上も上回る大流行となりました。

新型ノロウイルスの症状は、従来型と大きな違いはなく、予防法や対処法もさほど変わりはありませんが、健康な成人でも胃腸炎を起こしやすいという傾向が指摘されています。

ノロウイルスとロタウィルスの違いを比較

ノロウイルスとロタウィルスの違いについて、症状や感染経路などの各項目別に説明させていただきます。

[症状]

ロタウイルスは、乳幼児の感染性胃腸炎の原因となるウイルスで、ノロウイルスに比べて嘔吐、下痢などの症状が長引くことがあります。
ロタウイルスに感染すると、まずは嘔吐症状が始まり、半日から2日程度発熱や腹痛が続いた後、下痢が始まります。嘔吐の回数は1日3〜6日程度で、1〜2日で嘔吐はなくなります。下痢は白色の水様性を呈する場合が多い点が特徴で、この症状が5〜7日程度続きます。

乳幼児の場合、激しい脱水症状に伴う痙攣・脳炎などが起こる可能性があります。
5歳になるまでに繰り返し感染することが多く、大人は感染しても無症状であるケースがほとんどです。

[感染経路]

ノロウイルス、ロタウイルスともに、患者の便やウイルスに汚染された食品からの経口感染が中心となります。

[潜伏期間]

ロタウイルスの潜伏期間は1〜3日程度で、ノロウイルスに比べて多少長めになります。

[検査方法]

ロタウイルスに関しては、ノロウイルスと異なり、少量の便を採取し10分程度で検査できる簡易検査キットが開発されています。

[検査の目的]

子どもがロタウイルスに感染した場合は、脱水症状から重症化する恐れがあることから、その判断を適切に行うために検査を行います。

[治療方法]

ノロウイルス、ロタウイルスともに有効な治療薬がないため、脱水症状を防止するべく水分を補給しながら、ウイルスが体外に排出されるのを待つことになります。

[予防方法]

ノロウイルス、ロタウイルスの予防方法としては、共に手洗いおよび消毒が重要となります。
ロタウイルスについては、任意の予防接種を受けることもできます(有料)。
弱毒性ワクチンを経口接種するもので、生後6週間から接種可能です。

新型ノロウイルスの治療法と治療薬について

ノロウイルスの治療法

新型ノロウイルスの場合、現在はまだ効果的な治療薬がないため、嘔吐や下痢によってウイルスが体から排出されるのを待つしかないのが現状です。

発熱、嘔吐、下痢などのノロウイルス急性期の症状は3日程度で治まりますが、抵抗力の弱い子どもや高齢者の場合は、こうした症状が回復するまでに、より長い時間を必要とすることがあります。

ノロウイルスに感染した際、最も気をつけなければならないのが水分補給です。
脱水症状を引き起こさないよう、症状が現れている間は、常に水分を摂るよう心がけましょう。
補給する水分としては、人肌程度に温めた経口補水液やスポーツドリンクが特にお勧めです。一方、湯冷ましやお茶は、水分の吸収速度が遅いためあまりお勧めできません。
体力を激しく消耗している場合は、病院で点滴による水分・栄養補給を受けることになります。

ノロウイルスと治療薬

下痢止め用の薬は、下痢の症状を和らげる効果がありますが、その分だけノロウイルスの排出を遅らせ病気を長引かせる場合があることから、厚生労働省は「使用しないのが望ましい」としています。
従って、当初から下痢止めを使用することは避け、下痢が長引く際の最後の手段として服用するようにしましょう。

ノロウイルス感染による吐き気がつらい場合は、吐き気を抑える薬を服用するのが効果的です。吐き気を抑える薬は、食前に服用するタイプがほとんどなので、食事が摂れない状態でも投与できるという特徴があります。

胃腸を整える効果のあるとされる漢方薬も、ノロウイルス症状の緩和に役立つことがあるかもしれません。
体力回復のために、休息および睡眠は十分とることをお勧めします。

症状が和らぎ、食事ができる状態になったら、栄養価が高く吸収のよいものを摂り、体力の回復に努めましょう。
 

新型ノロウイルス診断のための検査方法や検査費用

ノロウイルスの検査方法

新型ノロウイルスに感染しているかどうかは、感染している可能性がある人の嘔吐物や便を採取し、遺伝子を検出する「電子顕微鏡法」「RT-PCR法」「リアルタイムPCR法」、ウイルス抗原検査である「EIA法」「イムノクロマト法」などと呼ばれる方法によって検査し特定します。

抗原検査の感度は、遺伝子検査に比べて約70%ですが、偽陽性の可能性が少ない点が特徴です。
ノロウイルス回復期にある患者や、感染しても無症状の患者など、ウイルスの量が少ないと思われる患者に対しては、感度の高いリアルタイムPCR法による検査を行うことを推奨します。

ノロウイルスは、感染後15時間が経過すれば、発症前でも便などからウイルスが排出されるため、検査が可能になります。

ノロウイルスの検査費用

ノロウイルスの検査は、従来は保険対象外でしたが、2012年4月より以下の条件を満たした方には保険が適用されるようになりました。
  1. 3歳未満
  2. 65歳以上
  3. 悪性腫瘍の診断が確定している患者
  4. 臓器移植後の患者
  5. 抗悪性腫瘍剤、免疫抑制剤、又は免疫抑制効果のある薬剤を投与中の患者

これ以外の方のノロウイルス検査費用は保険対象外として扱われるため、医療機関の外来でノロウイルス検査を受ける場合は、簡単な検査でも数千円、精密検査の場合は1〜2万円程度の費用がかかります。


ちなみに、症状の原因がノロウイルスであると判断されても、特に治療法に影響があるわけではなく、検査結果が出るころには症状が治まっている場合が多いことから、一般の方がノロウイルス検査を受けることはまずありません。

病院・福祉施設・給食関連施設などでは、ノロウイルス集団感染のリスクを避けるため、生鮮食品を扱う業務にたずさわっている方を対象に、ノロウイルスの感染の可能性がないこと、もしくは低い状態にあることを証明するための検査が行われる場合があります。

新型ノロウイルスの対策と予防法(消毒法や食品加熱など)

カキなどの貝類による食中毒の原因となる新型ノロウイルスの感染力はきわめて強いため、感染者の便や嘔吐物のみならず、それらが乾燥した際に発生する塵埃からも経口感染します。

また、十分に加熱していない食品を摂取した際にも、ノロウイルスに感染することがあります。

わずかな量のノロウイルスが体内に入っただけでも感染するので、感染者が一人でも出ると、集団感染が起こりやすくなるのです。

ノロウイルスにはワクチンなどがないため、感染を予防するためには、以下のことに特に注意してください。

[手洗い]

外から帰った後、食事の前後、トイレの後などには、こまめに手洗いをすることを心がけましょう。
手洗いの際は、石鹸やハンドソープを使い、流水で行います。指の間や手首、爪の中なども忘れずに洗いましょう。

[消毒]

料理に使った包丁やまな板は、使用した後すぐに熱湯で消毒しましょう。調理や配膳に関わる場合、さらに徹底して手洗いを行うことが必要となります。

[食品の加熱]

生ものに関しては、カキなどの貝類はもちろんのこと、その他の食品の場合も、中心部までしっかり火が通るように加熱処理を行いましょう。

[感染者の便や嘔吐物の処理の徹底]

ノロウイルス感染者の便や嘔吐物には大量のノロウイルスが含まれているため、処理の際は手袋やマスクを着用し、処理に使ったティッシュや雑巾などは、ビニール袋などに密閉してから処分するようにします。
便や嘔吐物の処理後は、その場所に塩素系消毒剤などをかけて消毒してください。
また、感染者の洗濯物は他とは別にし、塩素系消毒剤で消毒してから洗濯することをお推めします。

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